観劇記録

『人を喰らって生きてきた。』 感想

注意

ネタバレ有の感想記事です。

はじめに

先日観劇した「#人喰らい」についての感想記事です。
初めましてのUzumeさんでした。

題名から、山で遭難してカニバリズムした話かな?と想像してたら全然違いました。

劇場について

テアトルBONBON!結構久しぶり。落ち着く小劇場です。
今回は前の座席2列くらいが舞台面になってたので、後ろの列でも結構距離が近く感じました。

舞台について

脚本

重い!!めちゃめちゃ良かったです。

現代劇かつ重いテーマの作品でしたが、啓蒙や思想が色濃く出ているわけではなく、あくまでも「そういう物語」を見せている脚本だったのが凄く好きです。
これは完全に個人の意見ですが、作家さんの意志・思想が分かりやすすぎる脚本ってあまり好きではないんですよね。。見え透いているというか、押しつけを感じて。
本脚本はそんな感じが一切しなくて、純粋に物語に惹き込まれました。

ループするところとかの因果関係はあまり理解できていない事も多くありますが(できれば2回以上観たかった)多分噛めば噛むほど味のする物語なんだろうな・・・と。
かなり好きな物語でした。

舞台セット

大きな鳥居が中央に鎮座している舞台。
いかにもストレート!というセットでワクワクしました。

室内など、どう考えても鳥居は存在しないシーンもありましたが(むしろこっちの方が多かった)、そういうシーンではあまり気にならなくなるのって舞台の魔力だよな~と。あんなに存在感あるのにね。

あと開演前の雪のプロジェクション、文字にも雪が積もったりしていておしゃれでした。

演出

カテコ後の通知音の演出、良かったですよね!!
そこから現実に戻ってきてお客さんが一斉にスマホを見るまでが舞台の演出みたいでぞわっとしました。
SNS開くの躊躇ったよね。(結局開かなかった)

カテコも好きです。
キャストの皆さんが素の感じで笑顔で出てくるカテコも好きですが、舞台のキャラとして出てくるカテコはさらに大好きなので嬉しかったです。余韻が最高。

最初のOPというか、ダンスシーンもめちゃめちゃ好きでした。
多分2回目観たら印象もだいぶ変わったんだろうな・・・

キャストについて

いや~~~皆さんお芝居素敵でした。
節々のちょっと気まずい空気感とか各々の表情がめちゃめちゃ現実感あって最高でした。
人間関係が嫌いな私にとっては、犯人捜しのシーンとかちょっと嚙み合わない会話が嫌すぎて、帰りたくなる程現実でした。(すごい)

兼役の切り替えも見事で、すげ~~となりました。
服装も人も同じなのに別人に見えちゃうのも舞台の魔力、というか魅力ですよね。

下記、特に印象に残ったキャラクター・俳優さん方です。

シナノ(織部典成さん)

私は正直、シナノが悪いとは全く思わなかったです。
最後に「自分がよければいいのか?」と責められていましたが、シナノにそんな気はなかったんだろうなと。
「言葉の重みを知ってほしかった」と言ったように、シナノはめちゃめちゃ復讐をしたかった訳ではないのに、計画した上で全員を山に誘うという結構思い切った行動をしていた。
元々人を信じる良い人だったんだろうな。
だから他人に悪意を向ける加減が分からず結果的に「こんなはずじゃなかった」という終焉を招いてしまったのかもな。。とか思ってたらめちゃめちゃ遣る瀬無くなってしまった。(正しい解釈か分からんですが)
だからこそ終盤のシーンはシナノを擁護したくて堪らなかった。

最終的には一人生き残った後、独りで山を登り・・・最初と最後のシーンに繋がるのかな?
鳥居をくぐって異界(だったっけ?)に入り、乙さんと会話する。
シナノが「人を喰らって生きてきた」の「人」というのは、山岳研究会の他メンバーの事なのかな・・・
卵が先か、鶏が先か。こうして繰り返してるんですね。
あまりにも報われなさ過ぎて、幸せになってほしかったな。。

織部さんは.5以外で初めて拝見しましたが、織部さんのお芝居かなり好きです。
終盤の独白で目を真っ赤に潤ませながら振り向いた姿、痺れました。
暗さのある笑顔、目のハイライトの無さ具合も最高でした。

松本蒼(熊谷魁人さん)

邪悪というかなんというか・・・愉快犯という感じですかね。
人の裏の顔を見るのが好き、自分に関係ない事柄を野次馬して燃やす。
けど本人には人を傷つけてる自覚がないから、自分が悪いとはあまり思っていない。そこがより悪質。
今のSNSにこういう人たくさん蔓延ってますよね。
私はそちら側にならないように気を付けようと思いました。。

熊谷さん、悪い笑顔が素敵でした。

高山のぞみ(永田紗茅さん(柿喰う客))

あのおどおど感。心を開いていないというか、自己肯定感が低いというか。。
めちゃめちゃ現実でした。
ダンスシーンでの堂々とした振りを見て、何か裏があるキャラなのかな?と思ったのは伏線でしたか。

永田さん、初見でしたがめちゃめちゃ「現実」という感じのお芝居で惹かれました。

乙(中村真知子さん)

初っ端、出てきた時のオーラが強くてびっくりしました。
ホラーが始まるのか??と思ったくらい念のあるオーラ。

それとは反対に、昔話のシーン(最初の方)ではとても穏やかなおばあちゃんで、ここまで印象変わるのか・・・!とにこにこしちゃいました。すごい。

乙の正体を考えてみましたが、遠い昔に捨てられたお年寄りたちの集合体であるとは思うのですが、シナノのお母さんも入ってるんじゃないのかなと。(理由は特になくそう思うだけ)

あと雪崩を「白銀の百鬼夜行」と表すセンスが好きすぎます。

感想

SNSの嫌なところ、というか人間の嫌なところがダイレクトに見えた素敵な作品でした。
確かに重い。けど「言葉の重み」という言葉が自戒になりました。
ちょっと一度の観劇では足りなかったので、円盤出ないかな・・・

あと普通にSNS控えようかなと思います。
自分のメンタルに良くない影響もあるし、昔のシナノみたいに「SNSをやらない」という選択肢もあるよな。。と気が付いたので。
他人を傷つけずに自分の意志を持つということは矛盾も生まれるし難しいとは思うけど、私にとってはそれが理想かなと。
なんか、穏やかに生きたくなりました。SNSもそうだし、今の世の中は色々と激しすぎる。

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