ネタバレ有の感想記事です。
はじめに
2025.08.13 ~ 17に下北沢の駅前劇場にて上演された
はぶ談戯さんの「JULIO -フリオ-」(#フリオ2025)についての感想記事です。
初めて拝見する劇団さんでした。
そして多分俳優さんも皆さん初めましての方々、かつ初めての劇場でした。全てが初めて!
本公演を観に行くきっかけはステージナタリーさんのツイート(※頑なにポストとは言わない)でした。
メインビジュアルがめちゃめちゃ不穏でかっこよくて「これはきっと好きな舞台だ」と思ったのが一番のきっかけです。
自分はふらふらと舞台を観に行くスタイルなので、フライヤーやあらすじに惹かれて未知の劇団の公演に行くことはままある事なので今回もそのパターンでした。
昔は初めての劇場や劇団さんの公演に行くときはかなり緊張していましたが、流石に場数を踏んだからかあまり緊張せずにに行けるようになりましたね。
そして本劇団さんはトリガーアラートを出して下さっていたり、受付の説明・整理番号の誘導がとても丁寧だったりと、色々と配慮されている劇団さんなんだろうなという印象を持ちました。非常に助かりました!
あとこれは完全に自分が悪いのですが、髪型が似てるかつ服装が白い方が複数いたためキャラを認識できなかったシーンがちまちまありました。もっと前座れば良かったなと後悔してます笑
目が悪くなったなぁ・・・
舞台について
脚本について
後藤ひろひと さん作。まさにサイコサスペンス。
最悪の行動が重なった結果の最悪な終わり方という印象で、誰も救われない物語でした。
正直一度見ただけでは理解が追い付かない部分がありましたが(単純に「謎」の部分かも)構成は分かりやすかったです。
いくらなんでも非・人道的すぎる実験。片山さんが可哀想すぎる。
実験結果が出たところで医学の発展というよりかは戦争技術の発展に貢献しそうだなと思ったり。
最初の実験シーンの様子が生々しくて普通に血の気が引きました。笑
どうやら自分は精神崩壊系が苦手らしい。(検体役の石井さんのお芝居がとてもリアルでした。。)
また、個人的に死なないだろうと勝手に思っていた主要キャラもどんどん亡くなっていくので、驚きのある展開でした。
セット・演出について
穂科エミさん演出。
全体的に白い舞台。ただ血溜まりの跡、引きずった血の跡が見られる。
この白と赤が良い感じのアンバランスさでそれだけで少し不安を感じました。
劇場の天井の低さも相まって閉塞感がより際立ってたと思います。
最後のシーン、脅威は過ぎ去ったと認識し微笑む浅井刑事と里緒。
そして「フリオ」を流してしまう。歌が入った瞬間の里緒の表情と照明の演出。
最後の最後でかなりぞわっとしました。
そのまま暗転し、カテコもなしに客電がついて終わる後味の悪さがとても素敵でした。
かなり好きな終わり方です。
出来事について
少ない記憶を頼りに、メモがてらちょっと時系列順に整理させてください。
見当違いなこと言ってたらごめんです!他の方の考えも知りたいな。。
- レッドルーム実験(過去)
軽いノイローゼ患者の片山良一を真っ赤な部屋に閉じ込め、特定の周波数の音を聞かせ続けるという実験。
凶暴性のコントロールを目的に実施されていた。
片山良一は予想通り精神に異常をきたし、結果的に本物のウサギの頭部を噛み砕いた。
その後リハビリを経て退院。
定期通院(?だったかちょっと忘れた)で普通の人に戻った”ように見える”片山良一にあの周波数の「音」を聴かせると凶暴化した。
(謎の男の発言を信じると、ここで鈴木は身体・精神にダメージを負い医師から患者になった・・・?) - 4年前の事件(過去)
検体だった片山良一が退院後、奥さん以外の一家を殺害した事件。
きっかけは奥さんの片山かおりさんが好きだったフリオのエコーを偶然聞いたから?→誕生日のラジオだった!
(誰かが故意に狂わせたわけではなく、普通に事故?)
その後、片山良一は駆けつけた武田刑事によって射殺されて死亡。
しかしその片山良一の角膜と臓器が2人の少女に移植される。
(この移植は鈴木・有田の実験の内なのかな・・・?) - 舞子父母の事件(過去)
舞子の父母が殺害された事件。
これもフリオを聞いたのがきっかけかな。
舞子に移植された片山良一の細胞がレッドルーム実験を思い出し、舞子が父母を殺害。
弟の健児はその状況にショックを受けて子供返り+暴力性を持った?
(↓の健児が殺害した事件のシーンで頭をかじってる?ような動きが見られたからてっきり健児が殺したんだと思ってたけど、有田・武田殺害シーンでフリオを流した時に豹変したのは舞子だけだったから、舞子の父母殺害の行動を模倣してるだけ?かなと思った。) - 健児が殺害した事件
姉の舞子を襲った男を健児が殺害した事件。
これはフリオ関係なく、単純に姉を守ろうとした弟の行動か。 - 部屋の上から血が垂れてきた事件
これちょっと詳細分からなかった。↑の健児が殺害した事件とは別件?
でもうろ覚えだけど頭噛み砕かれてた気がするから、舞子もしくは健児が殺害に関わってるのかな? - フリオの謎に迫る
武田刑事は一人で音のエキスパート(?)のアンナを訪ねる。
これまでの事件現場にフリオのテープがある事を怪しみ、音源に何か問題があるのかと問う。
アンナは「フリオエコー」の話をし、フリオの歌声は解明できない方法によって加工されており、その加工された歌声がある周波数になる(?みたいな話)をする。
(ここで武田刑事は事件の全貌を大体理解した、のかな。浅井刑事に里緒の警護を命じたのもこの後かな) - 鈴木から里緒への接触
里緒の喫茶店に出向き、里緒と仲良くなった鈴木。
里緒の角膜に移植された片山良一の存在がまだ残っているという仮説の下、里緒にあの周波数の音を聞かせようとする。
が、突如現れた謎の男によって止められた挙句、「患者は鈴木の方だ、鈴木は検体だ」という趣旨の事を話されて取り乱し、結果的に音を流さないまま退散する。
(ここの謎の男がまさに謎すぎる、なぜ止める事が出来たのか。あれは幻覚というか鈴木の少しの正気が見せた過去回想シーンなのかな?出捌けの場所も普通の店のドアとかじゃない気がしたし。) - 有田・武田刑事殺害事件
病院に収監された舞子・健児。
その舞子を有田は鈴木の部屋に呼び出す。(何をしようとしていたかは不明?顔合わせだけか?)
いい感じに仲良くなった後、全てを大体理解しているであろう武田刑事が現れる。
舞子が殺しをしたかどうか尋ねて舞子が父母を殺害した事実を知る。(ここでは舞子は自分でやったと理解していない?)
その後突然健児が乱入し、有田を傘で突き刺し殺害。
武田刑事とも乱闘になり、何かのきっかけで武田刑事の持っていたフリオの音源が流れる。
(武田刑事が再生したんだっけ・・・?忘れた!)
フリオの歌声が入った瞬間、舞子が豹変し武田刑事を殺害する。 - 里緒の警護
武田刑事に命じられ、里緒の警護をする浅井刑事。
そこで片山かおりさんから「婦長から聞いたが武田刑事が亡くなった。犯人は舞子」という旨の話を伝えられる。 - 人質事件
ここ一番理解できてないかも!
ちょっと遠くて顔を認識できなかったんですが、人質を取ってる犯人は鈴木。であってる・・・?
全然違う人だったらマジで申し訳ない。(鈴木のテイで話します)
犯人が人質に取ったのは謎の男。手には注射器を持っている。
「実験に関わった者を消す。罪を償う」趣旨の発言をし、最終的には自身に注射を打つ。
その際、片山良一がウサギを噛み砕いた時に発していたフレーズを口にし、フェードアウト。(死亡かな)
(このシーンの前に婦長も殺害してる?謎の男が必死で止めようとしているのはなぜなのか。鈴木検体の実験を続けたかったから?人間として単純に死んでほしくなかったから?) - 里緒の幻覚(武田刑事が亡くなる前?時系列忘れた)
突如レッドルーム実験の幻覚を見る里緒。
その中で舞子に「会いに行く」と告げられ恐怖する。
ここで鈴木の正体などを理解する浅井刑事、だが真相には辿り着かない。 - 里緒と共に身を隠す
舞子から身を隠すため地下に行く喫茶店の3人。
突然締め切ったシャッターを叩く音がする。慄くが常連の源さんの声がしたので千佳は一人でシャッターを開けに行く。
何かが割れる音がした後、千佳の一部を持った健児が現れる。(源さんも被害者か・・・?)
健児に拳銃を向ける浅井刑事だが撃てず、ナイフで色々刺される。
里緒に逃げるよう伝え健児と乱闘する。 - 姉妹の邂逅
逃げようとした里緒の前に舞子が立ちふさがる。
おそらく全てを理解している舞子は「私たちは間違い」と一緒に死ぬことを伝える。
フリオのテープをかけようとした里緒を「人間のまま死のう」と制し、(おそらく武田刑事の)拳銃で一緒に頭を撃ちぬこうとした瞬間、舞子は浅井刑事に撃たれる。 - 終焉
血だらけの浅井刑事に舞子は殺される。
脅威は去った、終わったんだ。と安堵する浅井刑事と共に軽くはにかむ里緒。
舞子が持っていたテープが武田刑事のものと気が付いた浅井刑事と里緒は、テープを再生する。
フリオの前奏が流れ、安心した瞬間歌声が入る。
疲れた笑顔の浅井刑事の横で里緒のスイッチが入り終幕。
うん、書き出してみたはいいがやはり難しい!!
個人的に、語られなかった最後は救いもなく血の海なんだろうと思っています。そうして真相はまた闇に葬り去られる・・・
(でも謎の男が生きていたらいずれ真相は解明されるのかな??)
どちらにせよ、登場人物の事を考えたらかなりのバッドエンドには変わりありませんね。。
登場人物について
皆さんとても素敵な俳優さん方でした!
中でも特に気になったキャラ・俳優さんをピックアップしております。
武田(山本佳希さん)
刑事さん。一番「え!?殺されるの??」って思ったキャラクター。
てっきり主人公なのかと思っていたので中々の衝撃でした。
後輩の浅井刑事とのコンビ好きでした。。
もし浅井刑事に里緒の警護を頼む際に考察とか調査結果を伝えていたら、ほんの少しは事態が好転したりしたのかなと。
浅井(中山智瑛さん)
こちらも刑事さん。
先輩から好かれる素敵な後輩という印象でした!
そして健児に結構刺されても最終的には勝ってしまうフィジカルの強さ。
武田さんの病院突撃時に居てくれたら勝てたかも?
最後のテープ再生シーン、心の中で必死に止めていました。
結末は描かれていませんが、まぁ、、、
片山かおり(たかのあ茶みさん)
苦しかったな・・・
「もう一度殺してください」の表情に泣きそうになりました。
憂いを帯びた、というか諦めている暗い表情と雰囲気がとても現実感があって惹き込まれました。
謎の男(吉岡大輔さん)
役名通り、正直一番謎なキャラクターです。
最初の鈴木さんとのシーンから惹き込まれました。
あのシーンは謎の男が、鈴木さんと誰か(記者?)と話していたかつての場面を回想しているシーンと捉えていました。
途中幻覚のキャラクターか?と思ったりもしたのですが、刑事二人が病院から帰る時には普通に話をしていることに加え、人質にもなっているので、実在する人間の認識です。(喫茶店のシーンのみ鈴木さんの幻覚かな・・・と)
鈴木さんとの関係も分かっていませんが、やはり退院した片山良一さんのカウンセリング時に音を聞かせた結果、鈴木さんは身体・精神にダメージを負い医師から患者になった。と考えています。。
その時についた医師が謎の男で、逆に鈴木さんを検体として実験していた・・・?
刑事二人と話すシーンでは真っっっっっ赤な白衣(赤衣)で手も顔も含め全身赤くしてる姿でしたが、あれは鈴木さんを使ったレッドルーム実験の一環なのかな・・・とか思ったり。
人質のシーンをあまり把握できていなかったので(めちゃ大事そうなシーンなのに!)これは完全に勘なのですが、謎の男って生きていますよね?多分。
であれば一番最初のシーンって事情聴取とかの場面だったりするのかなと思いました。
保護された後、真相を知っている唯一の生き残りとして、レッドルーム実験の一番初めから説明しているという感じで。いや~難しい。
吉岡さんのお芝居はかなり不気味というか、まさに得体の知れない謎の男でした。
異質なキャラクターでしたがとても素敵でした!
舞子(長谷椿さん)
健児さんに向けている愛情、里緒さんに向けた優しさ、そして自身で終わらせる事を決意する強さ。
一番感情移入したキャラクターでした。
(個人的には「怖い」というより苦しさと切なさを強く感じました。)
ずっと苦しかったと思うし、彼女なりに足掻いた結果、多くの人を殺してしまったんだと考えるとすごく悲しい気持ちになります。
報われてほしかったと思う反面、最期に里緒さんが舞子さんの目を閉じて寄り添ったシーンを見て「きょうだいと呼ぶ存在から拒絶されなくてよかった」と心から思いました。
長谷さん、非常に素敵なお芝居で目が離せませんでした。。
特に武田刑事を殺害するシーンの豹変っぷりが素敵で、美しい髪を振り乱しながら喰らう姿に美しさすら感じました。
圭茂木(雅憐さん)
緊張が続く本作において、非常に助かるキャラクターでした。
出てきただけで場が和んでホッとする面白キャラ。
結局3人兄弟、なのか・・・?
唐突にバイトを辞めるシーンがかなりお気に入りです笑
アンナ(井川花林さん)
音のエキスパート(?)
こだわりが強い天才、だけど話は通じる。
そのバランスが圧倒的なカリスマ感を感じさせるキャラクターでした。
そのお陰で、個人的に本作で唯一しっかり安心する事が出来たシーンでした!
検体(片山良一) (石井智也さん)
上にも書きましたが、精神崩壊のお芝居がリアルすぎて凄かったです。。
片山さん、本当に可哀想すぎます。
勝手な想像ですが、移植された細胞に片山さんの意志や心はなくて、純粋にレッドルーム実験の記憶と記録が残されているだけだと思っているので、自分が死んだ後も自分のせいで本来の片山さん自身が望んでいないであろう殺戮の限りを尽くしてしまう。という仕打ちも悍ましすぎるなと。
やっぱり舞子さんの言った通り「すべてを終わりにする」が唯一の希望だったのかもなと思いますね。。
感想
久々の後味悪い系の作品だったので、謎に懐かしさを感じました。
この感覚だよね・・・
やっぱり終わり方が非常に好みです。あえて最後までは見せないし、カテコもなくそのまま解散。
お陰で「最悪だ~~~」の暗い感情をそのまま持ち帰る事が出来ました笑
面白かったです!!