観劇記録

やみ・あがりシアター『白貝』 感想

注意

ネタバレ有の感想記事です。
いや、ネタバレは極力しないつもりで書きました。
ただネタバレの当たり判定なんて人それぞれかと思うので、やっぱりネタバレはあるかもしれません。

はじめに

やみ・あがりシアター第22回公演「白貝」(#白貝)についての感想記事です。
初めてのやみ・あがりシアターさん!
団体名からしてセンスが好きです。劇団名のコンセプトもめちゃ素敵!

観劇のきっかけはいくつかあるのですが、舞台のキャッチコピー的なものに惹かれたのが最初でした。

「ぜんぜん口を割らないんです。
けど、こちらも顔が割れないわけで。」

素敵!!!
最初、顔が割れないって何?怪人二十面相か何か??と思いましたが、観劇して納得しました。
改めて読んでも惹かれるキャッチコピーです。

惹かれたのは確かなのですが、当時結構慌ただしくて、観たいけど観れないかな・・・ちょっと難しいかもな・・・とうだうだしていました。
そんな中、バズっていたこちらのツイートを発見。
書いてある内容に「めっっっっちゃ分かる!!!」と共感してリプ欄を覗くと、なんとそこには「白貝」のフライヤー画像が。
この迷ってるタイミングでかつ、この共感できる感覚を持った方がオススメして下さっているのであれば、行かない理由はないな!!と思い気合を入れてチケットを取りました。

結論、めちゃめちゃ面白かったです。非常に素敵な舞台でした。本当に観れて良かった・・・
ツイート主の方に感謝です。

あとスタッフさんの誘導や説明が非常に丁寧でとても安心しました。嬉しかったです!
前説もとても面白かったです笑(作・演出の方らしい)
そしてフライヤーがかっこいい!!

舞台概要

期間:2025/10/08 (水) ~ 2025/10/19 (日) 
劇場:
浅草九劇(東京都台東区)
上演時間:約120分(休憩なし)

・演出:笠浦静花

チケット料金
 一般……………………4,000円 
 22歳以下:……………2,000円
 生涯無料パスポート…0円

出演 (敬称略):
 青木絵璃(なかないで、毒きのこちゃん)
 荒波タテオ(popchicfactory)
 大見祥太郎
 加藤睦望(やみ・あがりシアター)
 加納遥陽
 河村慎也(南京豆NAMENAME)
 佐瀬恭代
 さんなぎ
 早舩聖(マチルダアパルトマン)
 樋口圭佑
 森下亮(クロムモリブデン)
 依乃王里

スタッフ (敬称略):【舞台監督】水澤桃花(箱馬研究所)、【舞台美術】中村友美、【照明】黒太剛亮(黒猿)、【音響】太田智子、【演出助手】井上瑠菜(露と枕)/西山珠生(幻視譚)、【フライヤービジュアル】イラスト:Erina デザイン:藍元青、【WEB】松葉智恵乃、【制作協力】横井佑輔(Play Plan)、【当日運営】吉乃ルナ

舞台について

ストーリーについて

この舞台を観たおかげで、自分は背負わなくていい秘密と約束を背負わされました。
でも自分はその内容を言いません。約束だから。

・・・↑こんな感じで、現実に侵食してくるタイプの作品でした。新鮮!
観劇してこんな気持ちになったのは初めてです。
鬱っぽい感情ではないが、何か重いものを得た気がする。

休憩なし2時間ということで比較的長めの本作でしたが、全くダレずに最初から最後まで惹き込まれていました。あっという間だった!
伏線が大なり小なりたくさんあって回収されるときめちゃ面白かったです。
最後の最後、痺れましたね・・・一瞬脳が縮んだ気がする。笑
観劇して衝撃を喰らったことは何回かありますが、個人的に知らないタイプの衝撃でした。
アッパーでもなく、後頭部の鈍痛でもなく、痺れ。
何を言ってるんだと思われるかもしれませんが、とても良い衝撃を受けました。

「不在」の人間についてのはなし。なのかな。これだけ書くとアングラ感ありますね笑
何度も何度も台詞に出てくるけど、「白滝タマコさん」はいない。生死不明の失踪状態。
そしてどのキャストもやらない。この舞台には存在していない。
不在の人間と、一人の純粋な人間、そしてその周囲を取り巻く関係者たちが繰り広げる人間関係。
個人的に人間関係ってドロドロしていて苦手なのですが、本作は嫌いじゃない方の関係性でした。
多分「邪悪!!」って感じの人たちじゃなかったからかな。

また、観劇前は普通にどシリアス舞台なのかな~と思っていましたが、意外にも笑えるシーンがたくさんあって楽しかったです。
途中「シチュエーションコメディかな?」と思うシーンもあるくらいには、コメディ的な観点から見てもとても面白かったです。
その分、その後の温度差でやられました。すごい。(情緒の乱高下大好き!)

ネタバレ控えてるせいで薄~く伸ばした内容しか記述していませんが、とても好みのストーリーでした!

セット・演出について

セットは「客席 | 舞台 | 客席」の二面舞台でした。
舞台面が抉れていて、客席より低いという初めて見るタイプでした。
舞台面の模様が地図で見る山の等高線のように見えるおしゃれなデザイン。(あと牡蠣にも見えた)
ここが山になるとは到底思えませんでしたが、開演後には確かに山がありました。
草木が生えてたり砂利があったりするわけでもないので全然山ではないのですが、山でした。舞台の魔法だ・・・

場面転換、めちゃめちゃ早くて自分の理解が遅れ気味になった時も若干ありましたが、そのスピード感が心地よかったです。
キャストさん、何度も出はけしてるの本当に運動してて良いなと思いました笑

テントや小屋のシーンで、照明らしい照明を使わず、ランタンや懐中電灯の光だけだったのが凄いわくわくしました。臨場感!

キャラクターについて

ネタバレなしで各キャラについて語るの難しくない??と思いましたが、書けることだけを書きました・・・笑
どのキャストさんも凄く素敵でした!(ほぼ初見の俳優さんだったと思います)
中でも、特に気になったキャラクターについて記述します。

葉月トオル(加藤睦望 さん)

あれから彼女はどうするのだろう。変わらず、山に登り続けるのだろうか。
純粋で優しい人は本当に幸せになってほしいと切に思いました。
あと自分も「顔が割れない」タイプの人間なので、最初の方はマジでトオルさんと同じ気持ちでした。。

加藤さん!同年夏にあんよさんの作品で初めて拝見して、あまりのかっこよさに心臓を掴まれておりました。
その時は(語弊かもですが)殺意高いバチイケなかっこいいお姉さんで、今作は芯の通った矜持を持つ純粋で優しくかっこいいお姉さんでした。振り幅がすごい・・・
改めて、とても素敵なお芝居をされる俳優さんだと感じました。

白滝タカラ(森下亮 さん)

タマコさんの息子。
一番最初にクライマックス来たかと思いました。緊迫感がすごかったです・・・!
と思ったら途中から全然立ち位置変わっていてびっくりしました、ギャップが笑
横暴だけどどこか憎めないキャラだなと思いました。

白滝アコヤ(加納遥陽 さん)

タマコさんの孫でタカラさんの姪。
終盤の読み上げるシーンが苦しかったです。彼女も辛かったよな・・・と。
タマコさんのこと何も知らないのに、確かな愛情を感じられて泣きました。

フジノハナ(さんなぎ さん)

タマコさんの経営していた芸能事務所の所属タレント。
タマコさんには色々と思うことがあるキャラクター。ただ、悪い人じゃなさそう。
相手は不在だというのに、何とも言えない複雑な人間関係が見える素敵なお芝居でした!

アサリ(青木絵璃 さん)

探偵さん。
あまりにも記憶に残る個性の強いキャラクター!と思いきや・・・なキャラクター。
あのキャラ結構好きでした、周りに居たら仲良くなりたいタイプ。
探偵さんって大変なお仕事だなと思いました笑

イタヤ(依乃王里 さん)

フリーの記者さん。
純粋さに心動かされた人。最終的にちょっと同情しました。
唐突にサイ〇ーエージェ〇トが出てきたのがツボでした笑
バ〇ェラー見たことないのですが、本当に出演されていた方のプロフだったんですね笑
是非とも幸せを掴んでいただきたいものです!

感想

ちょっとかなりネタバレに近くなりそうな感想です。
めちゃ主観なので見当違いなこと言ってたら、見なかったことにしてください!!

トオルさんの矜持とその矜持の終焉。
最後の最後で衝撃の事実が告げられるけど、別に鬱じゃない。
その事実は嬉しい話では全くないのだがなんか爽やか。ただ重みはある。

爽やかさの理由は、その真実がたった二人(+観客)だけのものであり、その二人はおそらく周りに言わないだろう。という信頼があるからかなと。
周りに言わない真実は、他の人からしたら真実になり得ないので(そもそも知らないから)全ては「無かったこと」になり、誰も傷つかない(内一人は傷ついてるかもだが)。
二人以外の皆は一旦あの場でケリをつけたはずだから、真実を知らない限りは日常が続くだけ。
だから多分鬱っぽくない。

観客はこの真実とある秘密の約束を共有されている。
約束は別として、この真実を自分の墓まで持っていけば文字通り誰も傷つかない。
(傷つく対象が舞台の中のキャラクターだとしても)
言わない・知らないほうがいい真実もある。そういう例だなと。

それも含めて、良い。美しいと思いました。
観客の一人である自分が、その美しさを壊すわけにはいかない。という美徳。
トオルさんの考えが素敵だったから、自分もそれに倣いたいと思いました。
だからまぁ、自分はこの約束も守り続けるんじゃないかな・・・
(この記事のURLもちゃんと考えて付けました笑)

あとモチーフについて、(一方的に)約束した時にいただいたヒントを基に調べたらなんとなくですが分かった気がします。もちろん書かないけど。
山登りは小学生の時にしたくらいですが、登ってみたくなりました。
登ればもう少し気持ちが分かったりするのかな?

本当に、とても素敵な舞台でした!(今思い出してもおいしい味がします。)

おつかれやま!

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