ネタバレ有の感想記事です。
舞台概要
期間:2025年9月14日(日)~21日(日)
劇場:下北沢 本多劇場
上演時間:約90分
作:フィリップ・リドリー
The Poltergeist by Philip Ridley
翻訳:小原真里
上演台本・演出:村井 雄
出演:村井良大
チケット料金:
全席指定……6,800円
U25…………3,000円
主催:有限会社石井光三オフィス
スタッフ:美術/竹邊奈津子 照明/杉本公亮 音響/清水麻理子 衣裳/日下和則 舞台監督/有馬則純 演出助手/簾長李花
はじめに
初めての一人芝居!
どんなものか形を掴めないまま客席に座りました。
「村井さんのことだから、お芝居が悪いはずはない!」という信頼と、未知への少しの不安。
でも開演したら、その不安はすぐに消えて惹き込まれました。
凄い、本当に凄かったです。
だって別の人間が“居る”んだもん。
舞台上には村井さん一人しかいないのに、なぜかいろんな人が出てくる。
シームレスにキャラクターを切り替えて台詞を言う姿に違和感はなく、途中から一人芝居であることを忘れて普通の舞台だと思って観ていました。
舞台について
サーシャについて
個人的にサーシャはとても可哀想な人でした。
(語弊があるかもしれませんが)薬に負ける弱さ、周囲を敵対視して自分の真実を疑わない愚かさ、そのくせ取り繕おうとする真面目さと自意識過剰さ。
ここまで書いて改めて思うけど、自分と根っこの部分が似ている気がします。
思い込みかもしれないという話は置いておいて、自分には彼の気持ちが痛いほど分かる。
だからこそ、その心情の厄介さが辛い。
だって周りの人はあんなにサーシャのことを想っていたのに、まるで届いていなかった。
人の目を気にしてなのか、表面上は頑張って取り繕い、パートナーであるチェットの心配にも笑顔で「大丈夫!」と答える。
そうして自分を追い詰めた結果、楽しそうに器物破損などの蛮行に及んで感情を爆発させる。
自分だったら見放してますね、こんな人……(ブーメラン)。
でもこの日は、彼にとって明るい未来へ漕ぎ出すきっかけになったんじゃないかな。
過去と向き合い、決別し、周囲の人の愛情に気づく。
遺恨はそう簡単に消えるものではないと思うけど、きっと別の世界を見ることができるようになった彼であれば、前に進めると思うし、そうであってほしい。
周囲の人々について
サーシャの蛮行を、フリン夫妻は寛大な心で目を瞑り、題名にある「ポルターガイスト」ということにしたのかな。
心が広すぎる。温かい。
デリカシーのない人たちとのコミュニケーションは、逃げたくなるくらい苦しかったです。
チェットとネーヴはサーシャを助けようとしてくれるけど、もっと彼を助けてほしかったし、その助けすら拒むサーシャに対しては「なぜ逃げない!」って思ったり、いろいろもどかしかった。
この嚙み合わなさがコミュニケーションよな・・・と。
感想
初の一人芝居でしたが、舞台の魔法を存分に浴びれた良い舞台でした。
それにしても、90分出ずっぱりで、膨大な台詞を喋り続けて演じ分ける……どれだけのスタミナと精神を消費するのか。
ただ見ているだけの自分も村井さんの熱量に当てられたのか、終演後はなんだかすごく疲れていました笑
本当に凄いと思います。尊敬。
次回があれば、ぜひ囲み舞台で観てみたい!色んな表情が見れそう。