観劇記録

『黒蜥蜴〜Burlesque KUROTOKAGE〜』感想

注意

黒蜥蜴ネタバレ有の感想記事です。
原作小説のネタバレにもなるのでご注意ください。

はじめに

黒蜥蜴。原作は江戸川乱歩の小説です。
結構前に一度読んだきりだったので、正直あまり覚えていませんでした。(面白かった記憶はある)
以前、この黒蜥蜴を題材にした他の舞台を観たことがあるので本公演はどんな感じになるのかな~と思っていたらまさかのオールメイル。
これは…どんな感じになるか全く分からんけど観たいな!!という感じで観に行きました。
観たのは島田さん、平野さん、前嶋さんの回です。

舞台セット

客席に入ったらもうね、なんか妖しい雰囲気だったよね。照明も布も妖しくて素敵でした。
それより客入れBGMがどれもかっこいい。セトリをください。

客席は三方囲みでサイドにあるのがバーレスク席。
バーレスクのお客さんは提供された仮面をつけて観劇されてました。仮面付けて舞台観る事なんてないからね。妖しくて面白い演出でした。
仮面付けてる人がスマホ見てる光景、なんかちぐはぐで笑っちゃった。現代だ!

スペース・ゼロは何度も来てるけど、来る度に座席の感じが違うのおもろいです。融通の利く劇場ですね。

概要

大筋は普通に原作小説と一緒、たぶん。(うろ覚え)
ただ時代背景がまさかの現代でおぉ!ってなりました。面白いアレンジ。

個人的に黒蜥蜴はあまりにも残虐だと思ってるから、結末は因果応報というか逆に、何安らかに逝ってるんだ!とも思ってしまう心もあるんだけど。(原作読んでた時もそんな気持ちしてた気がする)
なんかね、やっぱり切なさのある物語でしたね。
常人の自分には理解できない深い所にある想いの物語。

最期まで美しかったのは確か。
明智が黒蜥蜴の額に口づけをしているところでなんか涙が出てきた。
切なさと哀しさと大人っぽい色気を感じました。
この体験で明智探偵の心にも空洞が出来てしまったのだろうか。
出来ていたとしても、あの明智探偵は前に進み続けると思う。

キャラクターについて

黒蜥蜴(島田惇平 さん)

すごい。黒蜥蜴は原作でも他の舞台でも女性のイメージしかなかったからめちゃめちゃ固定観念がありましたが、両性的っぽいからこそ出せる色気がマジで妖しくて良かったです。
自分の中のイメージと比べると黒蜥蜴=上品って感じだったんですが、こちらは俗っぽさのある、けれども気高いカリスマという印象で「こんな黒蜥蜴もいるんだ…!」と固定観念を見事に崩されました。

感情の高ぶりと余裕のない時の差に、人間らしさを垣間見る事が出来ました。
黒蜥蜴の残虐猟奇さも非常に良かったです。

緑川夫人のお召し物、結構サイケデリックかつ布面積少なくて衝撃でした笑。海外のセレブって感じ。
あと、美術品に赤襦袢の子を選ぶなんて崇高な趣味してるな!と思いました笑(完全に個人的趣味)

明智小五郎(平野良 さん)

いや~~~良いですよね。張り付いた表情、顔を元に戻す動作。
最初の歩き方と醸し出す雰囲気から「あー、常人じゃないな」と感じさせられました。仕草、雰囲気、話し方、明智探偵の天才っぷりが如実に表れていてめちゃめちゃ説得力ありました。
やっぱり平野さんのお芝居、好きなんですよね。

ヲタクに扮した明智さん、確かに大分楽しそうで面白かったです。
あの時本当に楽しかったんだろうな。

現代版ということでスマホを操作するシーンがありましたが、そういや別役でもスマホを操作する平野さん見た事あるなぁ…となんだか懐かしい気持ちになりました。

雨宮潤一(菊池修司 さん)

潤ちゃん!衣装が思ってた感じと全然違うくて初手びっくりしちゃいました。
あのメイクと衣装を着こなせるの流石です。

こっちもこっちで切ないよね。
黒蜥蜴に対する陶酔でずるずると深みに嵌っていく。
最期に黒蜥蜴を守るために命を散らしたのは、彼にとっては幸福なことだったのかな。。

岩瀬早苗(前嶋曜 さん)

可憐。とても大切にされてきた箱入り娘感が凄かったです。
ただ反対に、あれだけ怖い目に遭わされたのに「冒険をありがとう」の言伝を託す豪胆さというか芯の強さもひしひしと感じられる、そんな早苗さんでした。

めちゃめちゃ目を奪われたのは、黒蜥蜴が早苗さんに変装するシーンだったんですがあれマジで凄かったですね。
早苗さんの格好をした黒蜥蜴、つまり演じているのは前嶋さんでしたが、まさに黒蜥蜴でした。
いつもの早苗さんと同じ顔、同じ衣装なのにあれだけ変わるんだ…と清純などに対する一種の冒涜さえ感じる豹変っぷりに心奪われました。

岩瀬庄兵衛(右近健一 さん)

とっても愛娘LOVEな父君。
普段の雰囲気に余裕があって、まさにお金持ちっぽいなと思いました。
そんな余裕と真逆に早苗さんの誘拐で取り乱す場面は鬼気迫るものがあり心が痛くなりました。

歌いあげる時の空気の震えが凄かったです。
とても素敵な歌声でした。

アンサンブルの方々

鮫島拓馬さん、笹川幹太さん、伊藤奨さん、大城麗生さん、橘愛斗さん、内田祐真さん。

6人のアンサンブルの方々、役も衣装もめちゃめちゃ変わってて凄かったです。
開演前から客席に降りたりお客さんに話しかけたりとで(この手の演出で実際にお客さんに話しかけるの始めて観たかも)どんどん没入できました。
皆さんの個性も様々で面白かったです。
アンサンブルの方々のお陰で、より妖しく華やかで記憶に残る舞台になっておりました。

おわりに

いや~、中々に凄まじい舞台でした。スぺゼロでアングラを感じられるとは思わなんだ。
オールメイルでどうなるのかと思いましたが、妖しく美しい、まさに黒蜥蜴の世界でした。
面白かった!

あと、原作小説も面白いので是非読んでみてください!青空文庫で読めますので。
自分も舞台を思い出しながらまた読もうかな。

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